給水配管でよく使われる「HIVP(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)」は、軽くて扱いやすく、腐食しにくいことから住宅・小規模施設でも採用されることが多い配管材料です。
ただし、施工がラク=事故が起きないではありません。むしろ塩ビ系配管の事故は、最初は問題なく見えて、数年後に突然トラブル化するケースがあるのが厄介なところ。
この記事では、HIVPの特徴を押さえつつ、施工事故の典型例と、特に相談が多い**「数年後に継手が抜ける」原因**を、できるだけ噛み砕いて解説します。
そもそもHIVPって何?VPと違うの?
HIVPは「耐衝撃性」を高めた硬質塩ビ管で、一般的なVPに比べて割れにくい設計です。現場での取り回しや軽微な衝撃には強い一方、“接着でつなぐ配管”という本質は同じ。
つまり、事故の多くは材料というより 切断・面取り・清掃・接着・挿入といった基本工程のミスで起こります。
HIVPの施工事故で多いトラブル例(現場あるある)
1)接着不良による漏水(施工直後〜数日)
塩ビ配管の接続は、ねじ込みではなく接着が基本です。ここでありがちなのが、
- 接着剤の塗布量が少ない/ムラがある
- 清掃不足(粉・水・油が残る)
- 乾燥不足(濡れたまま接着)
- 低温時に硬化時間を待たない
- “差し込んだだけ”で回し込み不足・保持不足
こうした要因で、通水後すぐにジワ漏れが出たり、圧力がかかった瞬間に漏れが発生します。
2)面取り不足で接着剤が削れる(遅発漏水の原因)
切断面の面取り(外面・内面)をサボると、差し込み時に接着剤が先端で削られて奥に届かないことがあります。
表面上はくっついて見えても、接着層が薄くなり、後述する“年数経過で抜ける”につながりやすい典型パターンです。
3)違う規格・部材の混在(VP/HIVP、メーカー混在など)
「見た目が似てるから大丈夫でしょ」と、規格やメーカーが混在すると、差し込み勘合が微妙に違って接着代(挿入長)が不足したり、接着剤の相性・指示が違って性能が出ない場合があります。
現場での“あるある事故”ですが、地味に危険です。
4)支持・固定不足で配管が動く(数年後の事故の伏線)
塩ビ管は金属管と比べて温度変化で伸び縮みしやすく、さらに水圧変動(ウォーターハンマー)で微振動が起きます。
支持金具の間隔が広すぎたり、固定点・逃げが不適切だと、配管がじわじわ動いて継手に引っ張り力がかかり続けます。
【事故例】数年後に継手が抜ける…その原因は“施工時の小さな甘さ”が多い
「施工当時は漏れてないのに、数年後に突然、継手が抜けた/外れた」という相談は、給水配管のトラブルでも特に怖い部類です。
抜けた瞬間に大量の漏水になり、床下・天井内・壁内だと被害が拡大します。
では、なぜ“数年後”に抜けるのでしょうか。よくある原因を整理します。
原因1)挿入不足(差し込みの浅さ)
接着接合は、**差し込み長(挿入長)**が命です。
施工時に「ちゃんと奥まで入れたつもり」でも、
- 面取り不足で途中で抵抗が出て止まる
- 接着剤が多すぎて“座屈”して浮く
- 差し込み位置のマーキング(差し込み線)をしていない
- 急いで戻ってしまい、奥まで保持できていない
こうした条件が重なると、接着面積が足りず、長期的な引張りに負けます。
原因2)硬化時間不足(“すぐ通水”が後で効く)
塩ビ用接着剤は、塗って差し込んだ瞬間に強度が出るわけではありません。
特に低温・高湿度・通風不良の場所では硬化が遅れ、十分な強度になる前に通水・加圧すると、接着層が微妙に乱れて内部に弱い層ができます。
それが年月をかけて劣化し、抜けにつながることがあります。
原因3)清掃不足・濡れ(接着層が“薄氷”状態)
接着面に粉(切粉)・土・油・水分があると、接着剤が材料にうまくなじまず、いわば“薄氷の上に貼ったテープ”みたいな状態になります。
初期は持っても、温度変化や微振動で少しずつ剥離が進行し、ある日限界を超えて抜けます。
原因4)温度伸縮+支持不足で“引っ張られ続ける”
HIVP自体は耐衝撃性があっても、温度変化による伸縮は起こります。
そこに支持不足があると、継手部が固定点になり、伸縮の力が継手に集中します。
さらに給水は開閉で圧力変動が起きやすく、微振動+引張りの繰り返しで、接着面が疲労していきます。
原因5)地盤沈下・建物の動き(埋設・床下で多い)
埋設部や床下配管は、地盤沈下・不同沈下・建物の微妙な変形で、配管に曲げや引張りがかかります。
柔らかい地盤や、点支持のような施工だと、継手にストレスが集まり、数年スパンで抜けることがあります。
施工事故を防ぐための“現場チェックリスト”(初心者向け)
最後に、素人でもポイントがつかめるように、最低限のチェックをまとめます。
- 切断は直角に(斜め切りは勘合不良の元)
- 外面・内面の面取り(接着剤を削らない)
- 乾いたウエスで清掃(粉・油・水を残さない)
- 差し込み線をマーキング(奥まで入ったか一目で分かる)
- 接着剤は規定量を均一に(少なすぎも多すぎもNG)
- 差し込み後は回し込み&保持(戻りを防ぐ)
- 硬化時間を守ってから通水(特に冬場は要注意)
- 支持金具・固定点・逃げを適切に(伸縮を継手に集中させない)
- 規格・メーカーの混在を避ける(部材の相性を揃える)
まとめ:HIVPの事故は「施工の基本」が数年後に効いてくる
HIVPは優秀な材料ですが、給水配管は常に水圧がかかり、温度や建物の動きの影響も受けます。
だからこそ、施工時の小さな手抜き(面取り・清掃・挿入長・硬化時間・支持)が、数年後に“継手が抜ける”という大事故になって表面化することがあります。
もし、床下や壁内など見えない場所での施工が多い現場なら、**「今漏れてないからOK」ではなく、「10年後も持つ施工か?」**で考えるのが安全です。

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