衛生設備の洗浄管に起きる「電蝕(でんしょく)」とは?原因と対策をやさしく解説

トイレや洗面所、病院や食品工場などの「衛生設備」では、配管を清潔に保つために洗浄水を流す仕組みが使われます。その洗浄水が通る配管(洗浄管)は、ふだん目に見えない場所にあるため、トラブルが起きても気づきにくいものです。

中でも厄介なのが「電蝕(でんしょく)」という現象。これは簡単にいうと、電気が関係して金属が通常より早く溶けたり傷んだりする腐食です。サビ(腐食)と似ていますが、電蝕は進み方が速かったり、特定の場所だけ穴が開くように傷んだりすることがあり、漏水・赤水・悪臭・設備停止などの原因になります。

この記事では、専門用語をできるだけ避けながら、洗浄管に起きる電蝕の仕組み、よくある症状、点検の考え方、そして再発を防ぐ対策をまとめます。


そもそも「腐食」と「電蝕」は何が違うの?

金属は水や空気に触れると、少しずつ酸化してサビたり溶けたりします。これが一般的な「腐食」です。ところが電蝕は、そこに電気の流れが絡み、腐食が加速したり、局所的に集中したりします。

イメージとしてはこんな感じです。

  • 普通の腐食:全体がじわじわ傷む(比較的ゆっくり)
  • 電蝕:一部分が急に傷む/ピンホール(針穴)のような穴が開くことも

「まだ新しい配管なのに漏れた」「同じ場所ばかり穴が開く」といった場合、電蝕が疑われます。


電蝕が起きる主な原因は2つ

洗浄管の電蝕は、だいたい次の2つが関係します。現場では両方が重なっていることもあります。

1)異種金属が触れて起きる(ガルバニック腐食)

配管や継手、バルブ、金具などで違う種類の金属が接触し、さらに水分(電解質)があると、電池のような状態ができることがあります。すると、組み合わせによっては片方の金属が優先的に溶けやすくなります。

たとえば(例として)

  • 銅系と鉄系
  • ステンレスと亜鉛メッキ鋼材
    など、材料が混ざる場面は珍しくありません。

ポイントは、**「水がある+金属が違う+電気的につながる」**という条件がそろうと起きやすい、ということです。

2)迷走電流( stray current )が流れ込む

もうひとつが「迷走電流(めいそうでんりゅう)」です。これは、本来流れるべき回路以外のところに電気が回り込んでしまう現象で、建物内の設備や接地(アース)、電気配線、近くの機器などの影響を受けることがあります。

迷走電流が金属配管に入り、別の場所へ抜けるとき、電気の出入り口付近で金属が溶けやすくなり、局所的に腐食が進むことがあります。


電蝕が疑われる「症状」チェックリスト

目視できない配管でも、次のようなサインが出ます。複数当てはまる場合、電蝕の可能性が上がります。

  • 同じ系統・同じ位置で漏水が繰り返される
  • 穴が「サビで薄くなった」よりも、点状(ピンホール)で抜ける
  • 継手や金具の近くなど、材料が切り替わる場所で起きやすい
  • 使っていない時間帯よりも、通水や稼働のタイミングで症状が出る
  • 赤水や金属臭が出る(ただし水質要因もあるため単独では断定しない)

「とりあえず漏れた箇所だけ交換」だと再発することがあるので、原因のタイプ(異種金属か迷走電流か)を見立てることが大切です。


ありがちな“間違った対処”と、正しい方向性

よくある対処:穴が開いた部分だけ交換

応急処置としては必要ですが、原因が残っていれば別の弱い場所からまた漏れます。特に電蝕は「点で進む」ため、次の被害が読みにくいのが難点です。

正しい方向性:電気的につながる条件を減らす

電蝕対策は、ざっくり言うと次のどれか(または組み合わせ)です。

  1. 異種金属を直接つなげない(絶縁する)
  2. 迷走電流が配管へ入らない/抜けないようにする
  3. 材質や施工方法を見直して腐食しにくくする
  4. 点検しやすい仕組みにして早期発見する

電蝕の具体的な対策(現場でよく使う考え方)

対策1:異種金属部に「絶縁」を入れる

異なる金属をどうしても接続する場合、**絶縁継手(絶縁ユニオン)**などで電気的なつながりを断つ方法があります。これにより「電池状態」になりにくくします。

※ただし、絶縁の入れ方を誤ると別の問題(接地や安全面、静電気など)につながることもあるため、設計・施工のルールに沿って実施します。

対策2:接地(アース)と等電位ボンディングの見直し

迷走電流が疑われる場合、電気設備側の観点が重要です。配管だけを交換しても、電気的な条件が変わらなければ再発します。
設備全体で電位差が生まれにくい状態(等電位)にする、適切な接地をとる、といった方向で検討します。

対策3:材質・継手・施工の標準化

同一系統で材料が混在するとリスクが上がります。更新のたびにバラバラな部材を入れるのではなく、系統ごとに材質や継手をできるだけ統一すると、トラブルが減りやすいです。

対策4:点検ポイントをつくる(“見える化”)

電蝕は早期発見がカギです。点検口、ドレン、漏水検知、圧力低下の監視など、設備の規模に応じて「異常が出たらすぐ気づける」仕組みを入れると被害が小さくなります。


相談するときに伝えると話が早い「情報」

業者や設備担当に相談する際は、次の情報があると原因特定が進みます。

  • 漏水箇所の位置(図面があればベスト)
  • 配管材質(銅/ステンレス/鋼管/樹脂など)と、途中で材質が変わる箇所
  • 漏れ方(ピンホールか、割れか、継手からか)
  • 同じ場所での再発履歴
  • 近くに大きな電気設備や機器があるか(ポンプ、制御盤、ヒーター等)
  • 接地(アース)の取り方が分かる資料があるか

まとめ:電蝕は「電気×金属×水」で起きる。再発防止は“原因の見立て”が決め手

洗浄管の電蝕は、単なるサビとは違い、電気的な条件が絡んで腐食が進む現象です。原因は大きく「異種金属の組み合わせ」と「迷走電流」の2系統。漏れたところだけ直すと再発しやすいので、**電気的につながる条件を減らす(絶縁・接地の見直し・材料統一)**ことが重要です。

目に見えない配管ほど、トラブルは“突然”に感じます。でも仕組みを知っておけば、点検や更新の判断がしやすくなります。気になる兆候がある場合は、早めに設備・電気の両面から確認してみてください。